ピアノ協奏曲第20番二短調 2
暗い低弦のうなりに始まるこの協奏曲は、両端楽章に地獄の深淵をのぞかせるような、恐ろしさを持っている。
これはウィーンの人たちにショックを与えるのに十分だった。
ごく一部の人にしかこの曲の偉大さはわからなかったであろうが、それ以上に一般の人々に与えた不快感のほうが大きく、「モーツァルトの音楽は難しい」という評判の立つ引きがねになってしまう。
そして没落への道につながっていってしまうのである。
そうした強烈な曲だけに、二十世紀に入ってモーツァルトが復活し始めたときに、ピアノ協奏曲の中で最も着目されたとしても当然であろう。
すでに戦前からブルーノ・ワルターやシュナーベルらが、好んでこの協奏曲を手がけていた。
それらは音質が悪くても、歴史の一時期を代表する名演奏の録音となって残っている。
名曲であるだけに、無数の録音があり、大会社が大々的に宣伝しているものもあるが、真に成熟した演奏とその録音というものが、それほどざくざくこの世に現われるわけではない。