ピアノ協奏曲第9番変ホ長調《ジュノーム》2
そしてこの古典派の定型を初めて打ち破ったのがべートーヴェンで、彼の第四、第五ピアノ協奏曲である。
これは一つには十九世紀に入ってから市民社会が発達し、そうした聴衆が協奏曲における独奏者の名技を中心に求め始めたこととも無関係ではない。
そしてついにロマン派の協奏曲では、冒頭のオーケストラによる主題提示部が省略される形になったと考えられる。
だからそうした意味では、このピアノ協奏曲は非常に新しく、将来を予見していたとも言えるのだが、しかしモーツァルトの場合はそんな深い意味があったわけではなく、応答的な主題の中にたまたまピアノを組み込んだ気紛れのやり方と考えてよい。
というのは、彼はその後数多くの協奏曲を作曲しているが、二度とこういう手法はとっていないからである。
しかしとはいえ、この曲の開始はじつに自然で、よく出来ており、聴く人を引き付けるに充分な魅力がある。