横顔の死角
つくれない横顔を、人前に放り出していないか?
3歳からバレエを始め、学生時代もほとんど毎日のように、バレエスタジオに通い、青春のすべてをバレエに捧げたクラスメイトがいた。
そもそも、バレリーナを目指す少女の生活は、すべてがバレエとなるのがふつうで、みんなとお茶することもなくバレエへ直行する彼女の姿は痛々しくも見えた。
もうずっと会っていない。
でも不意に彼女の顔が浮かんでくることがある。
いつも、横顔だった。
別にすごく鼻が高いとか、額が立派といった特徴はなかったが、その美しさが忘れられない。
しかしふつう誰かの顔を思い出す時、横顔だけというのも考えてみれば少し変だ。
他人の横顔を見る場面はじつはとても多いのだが、横顔は不思議に記憶にない。
それはたぶん、横顔とは話をしないから。
横顔とは付き合ってないからだ。
逆に、人は横顔で表情をつくらない。
つくろうにもつくれない。
ほとんど野放し状態と言ってよいのです。